小津安二郎監督おすすめの映画ランキングTOP5

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小津安二郎監督おすすめの映画ランキングTOP5

清濁あらゆる意味において対象を真摯に見つめ、良くも悪くも人間味あふれる作品に仕立て上げる映画作りは他では見られない独特の味わいに満ちている。 また、映像としても画面作りなどの随所に監督のこだわりが見て取られるものであり、いずれの作品も監督の個性が光るものとなっている凄さがある。 俳優・笠智衆の柔らかな人間性を最大限に引き出せる監督であるという点も見逃せない。

 

 

第5位.小津安二郎「東京物語」

小津安二郎「東京物語」がおすすめの理由

いわゆる「小津調」映画として最も有名な作品の一つと言える、映画における「絵作り」が非常に魅力的な一作。物語としては家族の不和が前面に押し出された作りで物悲しい展開が全体的な流れとなっている作品ではあるが、笠智衆と東山千栄子演じる老夫婦の、人生の終局から自分たちの身の上を振り返りつつ、大きく成長した自分たちの子や孫、新しく家族となってくれた嫁達に向ける悲しさと喜び、頼もしさが全て渾然一体となって向ける優しい眼差しは、夕暮れの美しさと暖かさを思わせる。詩情というにはあまりに人間臭く、優しいというには淡々と冷静に事態を捉えながらも、そこから決して目をそらせないまま静かに流れていく時間を見せつける様は、何処にでもある家族の冷めた中を映しているはずなのに、決然とした美しさにも感じられる不思議な作品となっている。名作として名高く、見るべき所の多い本作であるが、物語として少々真に迫り過ぎるきらいはあるという事で、見る人を選ぶ側面もある。

 

 

第4位.小津安二郎「お茶漬けの味」

小津安二郎「お茶漬けの味」がおすすめの理由

詩情豊かな小津調映画を期待して見ると、その意外性に驚かされる事請け合いの一本。すれ違う熟年夫婦が互いにほんの少し羽を伸ばしながら、些細な事を通じて顔を見合わせ、にっこり笑って仲直りをする…というともすれば下世話と言えるような、しかし何とも愛嬌一杯の人間味に溢れた物語もまた、小津安二郎作品の特徴であると納得させられる一本。生活に余裕のあるブルジョワ階級の人物達を、嫌味無く鷹揚で愛嬌のある人間性で描き上げる物語展開は小津安二郎が対象に注ぐ視線を良く表しているものだと感じさせる。表題がお茶漬けの味となっているように、この作品では特に食事の描写が美味しそうであるという所も見所の一つ。ブルジョワ階級の人々が珍しい良いものを食べるというのではなく、トンカツやラーメンと言ったものを少しひなびた店で美味しそうに食べたり、夜中にこっそりつまみ食いという「悪さ」に興じる夫婦の姿を軽妙に映し出す様は、映像なのに味を感じてしまう程である。小津安二郎映画の手始めとして気楽におすすめ出来る一本である。

 

 

第3位.小津安二郎「秋刀魚の味」

小津安二郎「秋刀魚の味」がおすすめの理由

天高く、風の清かを聞きながら、焼けた秋刀魚の旨さの奥に、見え隠れするわたの苦さ。そんな口一杯に広がる「秋」の味わいと香りを思わせるような「味わい」を人間模様によって描き出した本作。過去の小津作品を思わせる幾つものシーンが表れては、それが改めて違う作品である本作を彩っては流れていく、小津安二郎監督の遺作であり集大成と呼べる作品に仕上がっている。人物達はどこかさみし気なのに、口を開けばにこやかに、軽妙な語り口で優しげに、しかし時に辛辣な言葉を交わしては静かな時間を過ごしていくという中に、人生の四季を経て来た事でたどり着いた秋から冬へ至ろうとする移ろいを感じさせる。娘を嫁として送り出す父親というテーマが本作品でも主たる部分として用いられているが、本作品ではより核家族化が進んだ時代を写し取っているのか、物理的な距離よりも精神的な距離が本当の意味で離れてしまう別離を感じさせる意味でも「秋の風情」を感じるものとなっている。しかしながら、何処までも暖かな色使いと構図によって寒々しいばかりでない「画」として作り上げられた雰囲気は、正しく小津映画を象徴する一作と言えるだろう。

 

 

第2位.小津安二郎「お早よう」

小津安二郎「お早よう」がおすすめの理由

小津安二郎監督作品におけるカラーフィルム第二作目にして、渾身の「オナラ」映画。名実共に巨匠として名が通った時期に、映画でやる為に長年温めて来たネタを一挙に打ち出したとされるエピソードまで含めて、小津安二郎という人物のヒューマニズムに溢れる快作。余計なおしゃべりをするんじゃないと叱られた子供たちがストだと言って、言葉ではなくオナラで会話を始める発想は、実に素っ頓狂ながらリアリティを感じる「ありそう」な話として頷かずにいられず、それを嫌らしくなく、子供が子供として知恵を絞った結果という形で描いている部分に、小津監督の子供に注がれた眼差しを感じるものとなっている。一方で「大人だって余計なこといってるじゃないか。コンチハ、オハヨウ、コンバンハ…」と、大人の理不尽に対して虚を突いて見せる様などは、映画のセリフながらハっとさせられる妙味もあり、子供たちの姿にのみ留まらず、周囲を振り回し或いは振り回される大人達の姿にも通底する小津監督の「キャラクター作り」によって生み出される物語の緩急が、最後まで飽きさせない作品に仕上がっている。また、小津監督一流の絵画的色使いのこだわりが詰まったカラー作品であるが故に、描き上げられる風景の素朴な美しさが、子供染みたナンセンスな展開をも汚らしく見せないという点が実に味わい深い。

 

 

第1位.小津安二郎「晩春」

小津安二郎「晩春」がおすすめの理由

監督・小津安二郎と俳優・笠智衆というコンビが織り成す「娘の幸せを願う優しい父親」という姿を、最も暖かく万感を感じられる映像として完成させた作品。原点にして頂点と言えば大げさに過ぎるかもしれないが、そう思わせるだけの完成度を持つ作品である。特に秀逸なのが本作のラストシーン。手塩にかけて育てて来た娘がとうとう嫁入りを迎え、誰からも立派な嫁入りでしたと言われるだけの精一杯を果たした父親が、一人空っぽになった家に取り残されるというもの。言葉も無く思い出の影を探し求めるかのような父親の姿は文字通りの万感を見るものに投げ掛けるものであり、その様だけを見れば余りに悲しい映画であると言わざるを得ない。しかし、そこに流れる暖かな音楽、そして何故か夜のシーンであるのに、映画の全体で瑞々しい映像を描き出していた夏へ向かおうとする光の具合が鮮烈な印象を残していた為か、深く青く広がる美しい空を印象として持ってしまう。万感という所は正にこの部分であり、愛する娘と別れる後悔や執心、親の建前としての前途を祝する気持ちだけでなく、本心からその希望に満ちた前途を祈るからこそ表れた姿が声無き慟哭であるように見えてしまうという、複雑な感情の発露を受け手として幾重にも思わされる作品である。

 

 

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