黒澤明監督おすすめの映画ランキングTOP5

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黒澤明監督おすすめの映画ランキングTOP5

時代に関係なく、いい映画はいい映画なんだ、ということを思い知らせてくれた監督です。90年代後半から日本映画を見始めた私は、初めはリアルタイムの新作ばかり見ていて、古い映画には興味がなかったのですが、「用心棒」を見て黒澤監督にハマり、ほかの往年の日本映画の多くにも出会うきっかけになりました。モノクロ時代の有無を言わせぬヒューマニズム、キャラクターの人間味とカッコよさ、カラーになっても変わらない映像美とダイナミズム、世界にも類を見ない個性と大衆性をもった作家だと思います。

 

 

第5位.黒澤明「生きる」

黒澤明「生きる」がおすすめの理由

自分の余命がわずかだと気づいてしまった市役所勤めの初老の男が、自分の人生の意味を見出そうと四苦八苦する物語。タイトルからは、超マジメな優等生的感動作を想像してしまう人も多いかもしれませんが、市役所に陳情に来た主婦が軽くたらい回しにされる冒頭からして風刺たっぷりの雰囲気。病院の余計なおしゃべりのせいで病気に気づいてしまう展開といい、徹底してドライな、まさかのコメディタッチで映画は進んでいきます。主人公を演じる志村喬の、いかにも事なかれ主義で生きてきた小市民という雰囲気が絶妙。中盤、主人公が生きがいの糸口を掴んだかに思えたところで、映画はいきなり半年後に飛び、彼の葬儀が行われているという展開にも驚かされます。葬儀の席での同僚たちの会話も、死者を悼む感傷と上司に逆らえない保身が交錯し、人間臭い感情が渦巻いてとても面白い。そんな中、彼の最後の姿を見ていた人物が現れて、失意のまま死んだと思われていた彼の本心が明らかになるラストが鮮やかです。ブランコに揺られて「ゴンドラの唄」を口ずさむ有名なシーンは忘れられません。人間への風刺と共感の中で、生きがいとは何かを問いかける、黒澤監督の中では異色の傑作だと思います。

 

 

第4位.黒澤明「隠し砦の三悪人」

黒澤明「隠し砦の三悪人」がおすすめの理由

戦国時代、隣国に滅ぼされた秋月の国の武将が、国の再興のため、薪に仕込んだ軍資金と姫を守って敵中突破していく痛快時代劇。黒澤監督の時代劇といえば「七人の侍」で、その素晴らしさはもちろん言うまでもないけれど、骨太なストーリーの面白さの点では、「隠し砦~」がピカイチだと思います。農民上がりの雑兵2人を狂言回しに、次々と訪れるピンチを、それぞれの腕と機転で突破していく展開にはワクワクしっぱなし。ライバルの武将との一騎打ちや、農民たちの火祭りに巻き込まれるシーンのダイナミックな映像も素晴らしい。加えて、姫を演じるのが、当時まったくの新人だっという女優さんですが、とにかく美しく、気性の激しさの裏に哀しい優しさが感じられて、とても惹きつけられました。終盤、ついに捉えられて万事休すと思いきや、姫の人柄に打たれた敵の行動で一気に形勢逆転する、「裏切り御免!」のラストが痛快です。映画はこうでなくちゃ、と思わせてくれるエンタメ作品でした。

 

 

第3位.黒澤明「乱」

黒澤明「乱」がおすすめの理由

他国を征服し続けてきた武将が、3人の息子に国を分け譲って隠居しようとするが、それが引き金となって壮絶な争乱が繰り広げられる、シェイクスピアを下敷きにした時代悲劇。カラーになってからの黒澤監督作は、モノクロ時代のような単純明快な痛快さがなく、好き嫌いが分かれる感じがしますが、それでもこの作品のスケールは圧倒的で、文句なしに悲劇を堪能しました。これ以前の映画の合戦シーンではあまり見たことのない、美しい緑の風景を捉えた俯瞰の映像の中で、人間の支配欲や復讐心が愚かな争いを引き起こしていく姿が容赦なく描かれます。息子たちの奥方は、父親が滅ぼした国から奪ってきた女性で、父親が征服し続けてきた過去のツケそのもの。彼女らの恨みや許しが争いを動かしてく哀しさに、なんともやりきれないもの感じました。特に、父親が二人の息子に襲われて城を追われる合戦シーン、カッコいい武将同士のやりとりはなく、ただひたすら血みどろになり朽ちていく雑兵たちの姿が映し出されるのには、監督の祈るような思いを突き付けられるようでした。

 

 

第2位.黒澤明「用心棒」

黒澤明「用心棒」がおすすめの理由

江戸時代、やくざの跡目争いでさびれた町に現れた浪人が、やくざ同士を争わせて壊滅させようとする痛快時代劇。これこそ単純明快、痛快、骨太なモノクロ黒澤時代劇の真骨頂。三船敏郎演じる主人公、自称「三十郎」のキャラクターがとにかく素晴らしい。剣の腕は滅法強く、どっしり構えてふてぶてしく、それでいて酒好きでちょっとお茶目な人間味があり、とても魅力的です。このキャラは、その後の多くの時代劇ヒーローの原型になっているのではないかと思います。彼が居座る居酒屋のおやじを演じる東野英治郎もいい。ずっと渋い顔をして、争いを起こそうとする三十郎のことをとんでもない奴だと怒り続けていたのに、彼が弱い者を助けたと知るところっと豹変して味方になる。後半は彼らのバディムービーのようでもあり、互いのさりげない信頼がなかなか泣かせてくれます。そして強敵となる仲代達矢の悪役の魅力。ラスト、生き方が違ってもどこか通じ合っているような二人の対決は名場面でした。「あばよ」一言のラストもカッコよく、白黒の時代劇なんて・・と思ってる人にこそ見てほしい痛快エンタメです。

 

 

第1位.黒澤明「赤ひげ」

黒澤明「赤ひげ」がおすすめの理由

江戸時代、庶民のための養生所に配属された若い医師が、老医師「赤ひげ」に反発しながらも成長していく物語。定番すぎて批判も多そうだけど、どれか1つを1位に選ぶならこれかな、と思いました。初めは反発していた医師が、患者たちの貧しくも気高く一生懸命な生き様、死に様に触れる中で変わっていくのですが、その患者たちそれぞれの物語がどれも印象に残ります。醜悪でしかないように見えた老人の死の裏に、家族の幸福を願い苦悩し続けた人生の重みが見える瞬間。他人に尽くし続けてきた男が、死に際に告白する妻との哀しい記憶。そして、虐げられていた場所から救い出され、人間らしい生きかたを知っていく少女。死から人生をさかのぼっていくエピソードから始まり、これから人生をつかみ取っていく子供のエピソードで終わるという構成も素晴らしいです。赤ひげを演じる三船敏郎が貫禄溢れる名演で、青臭く素直な医師役の若い加山雄三もいい。子供たちの心のこもった演技にも感動しました。

 

 

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