パトリス・ルコント監督おすすめの映画ランキングTOP5
一筋縄ではいかない男と女の恋愛が多く、主人公にしても決して若くもなく、男前でもない人が多い。美男美女の若者が繰り広げる映画なんて腐るほどあるけれど、彼はそういった映画は決して撮らない。悲哀に満ちた、哀愁に満ちた、それでも変な、そんな映画をたくさん撮っているので、たまらなく好きな監督。
第5位.パトリス・ルコント「フェリックスとローラ」
パトリス・ルコント「フェリックスとローラ」がおすすめの理由
移動遊園地のオーナーをしているフェリックスと、謎の多いローラの二人の恋愛物語です。まず、フェリックスはとにかく実直なおじさんで、ローラに対してまっすぐです。それにくらべ、ローラは姿を消したり、また表したりと謎の行動ばかりで、二人の仲はどうなるのか、と物語の展開は予測つかないところも好きです。実は、ローラはわざと謎の多い行動をしており、またフェリックスには嘘ばかりついて、自分から謎めいた存在であることを演出していることがあとでわかります。普通なら愛想つかしておしまい、でしょうが、フェリックスはそれも含めてすべてを包み込もうとします。ここで、フェリックスを愛らしく思える自分を見つけてしまいます。ルコント監督の描く男性は、このように実直なおじさんの愛らしい姿を描いていることが多く、このフェリックスもその一人です。また、映像も素晴らしく、ルコント監督にしては色彩がものすごくはっきりしており、それもおすすめ理由の一つです。ローラはちなみにシャルロット・ゲンズブールです。
第4位.パトリス・ルコント「髪結いの亭主」
パトリス・ルコント「髪結いの亭主」がおすすめの理由
フランス映画では間違いなく名前が知られているジャン・ロシュフォールが主演です。この映画は、昔から髪結い(床屋)の亭主になることが夢だったおじさんが実際にその夢がかなう話です。髪結いは女性で、自分はその亭主になりたい、という夢が、まず独特です。彼はものすごい美人の髪結いと結婚し、何をしているかと思えば、妻である髪結いにちょっかいをかけたりするだけで、特に仕事はしていない様子です。多分、掃除や食事などは作ってるのだろうけれど、そういう姿は描かれていません。そんなある意味ぜいたくな生活が続きますが、あるとき豪雨の中「愛している」と告げていなくなってしまいます。亭主は、その後も彼女が戻ってくると信じている姿がラストに描かれています。またしても、仕事ができるわけではないけれども、愛らしいおじさんのいちずな姿が心を打ちます。また、この映画はマイケル・ナイマンがサウンドトラックを担当していて、彼の曲もとてもすばらしいです。
第3位.パトリス・ルコント「橋の上の娘」
パトリス・ルコント「橋の上の娘」がおすすめの理由
フランス映画では知らない人がいない、ダニエル・オートイユが主演です。相手はヴァネッサ・パラディ、元ジョニー・デップの奥さんです。ダニエル演じるしがないナイフ投げのガボールと投身自殺をしようとしていた女性アデル(ヴァネッサ)が、ナイフ投げとその的になり、旅を続けるという映画です。この映画の素晴らしいところは、二人はおそらく恋心をお互いに抱いているにもかかわらず、「好きだ」とかキスを重ねる、抱きしめる、といった行動は全くしないところです。その代わりに、二人はナイフ投げとその的になり、彼女の体のギリギリのところに、どんどんとナイフが刺さっていく姿がなぜか不思議と官能的に描かれており、それこそがお互いの愛情の確認なのだとわかります。そんな描き方をした映画を、自分はこれをみるまで一度も見ることはありませんでした。また、すべてモノクロで描かれており、それもまたこの演出をきわだたせているとおもいます。この二人の男女の不思議なやりとりはルコント監督しか描くことはできなかったと思います。
第2位.パトリス・ルコント「列車に乗った男」
パトリス・ルコント「列車に乗った男」がおすすめの理由
パトリス・ルコント監督というと恋愛映画が多いのですが、こちらは老齢の男と中年の男の不思議な友情の物語です。ルコント監督の時点で普通の友情を描いた作品ではないことは確かです。この映画で描いているのは、「自分は全く別の人生を歩みたかった」という、誰もが思うことを描いています。でも、その誰もが思うことを、まさに誰もが描けないスタイルでルコント監督は描いています。主演はジャン・ロシュフォール。引退した教師の役で、彼はひょんなことから銀行強盗を企てている中年の男と出会います。元教師は、破天荒に生きる中年の男の人生をうらやみ、中年の男は元教師のしっかりとした人生をうらやみ、全く違う人生を歩んだ二人が出会い、うらやむというのも映画的な出会いかもしれません。では、そこからその違う人生を歩むのかと思えば、そんなことはなく、彼らはそれぞれの人生で終焉を迎えます。正直言うと、出会いこそ奇跡かもしれないが、それ以外は劇的なことは何も起こらないことがとてもリアルにせまってきます。二人の哀愁漂う演技もたまりません。
第1位.パトリス・ルコント「仕立て屋の恋」
仕立て屋の恋 -デジタルリマスター版-/DVD/PCBE-54712
パトリス・ルコント「仕立て屋の恋」がおすすめの理由
ルコント監督のなかでは初期のほうの映画になります。主人公はしがない中年男性。ミシェル・ブランが演じています。彼は孤独な男性で、ずっと向かい側のマンションに住んでいる女性(サンドリーヌ・ボナール)に恋しています。だからといって、何かするわけでもなく、じっと窓から女性の姿を見ているだけです。趣味は悪いです。のぞきのような行為になるので、人によっては「気持ち悪い!」と思う方もいるかもしれません。彼はそこで向かい側の女性の犯罪をみてしまうわけですが、彼は彼女が好きなため、刑事にはそれを言えません。徐々に刑事は、この中年男性が何かを知っていることをかぎつけますが、最終的に女性はこの中年男性が犯人だ、と嘘つくわけです。「君を少しも恨んでいないよ。ただ死ぬほど切ないだけだ」と彼は言います。そして、刑事に追われる中で足を滑らせて屋根から落ちていき亡くなりますが、そのとき、女性の方をみるときだけスローモーションになるところなど、とても切ないです。変態かもしれませんが、そんな変態が悲しく切ない恋心を抱きながら、悲恋に終わる姿、ずっと心に残ります。
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