ロバート・ゼメキス監督おすすめの映画ランキングTOP5
映画という媒体を用いた物語構築の巧みさがどの作品でも際立つ。悪ふざけのような話に見えて深い思索を裏に秘めているかと思えば、遠大な世界を目に見える形で描き上げて見せる。その手腕はどの作品を見ても新鮮な驚きという形で表れる。かと言って高尚に過ぎる事も無く、ただ映像として完成している作品を見ているだけで幾重にもそんな驚きを提供してくれる希有な映画監督である。
第5位.ロバート・ゼメキス「永遠に美しく…」
ロバート・ゼメキス「永遠に美しく…」がおすすめの理由
誰がつけたかこの邦題。その美しいイメージとは正反対で、ロバート・ゼメキス作品の中では最高クラスにブラックなユーモアを込めた作品。物語としては永遠に美しくいたい女優がそれを手にした事から巻き起こる大騒動。驚くのはその物語の展開で、最初は愛憎渦巻く男女の物語から始まり、裏切られた女が狂気に走る復讐劇…という様相で前半が終わり、ああこういうお話なんだと油断した頃合いを見計らったかのようにゾンビ映画が始まる。こうして書くとふざけてるのかと思われるかもしれないが、この破天荒極まりない展開がユーモアとして一本の映画というパッケージに収まっており、ちゃんと納得出来る結末へと導かれる。104分という今の尺度で考えると短めのお話の中に、2本分のお話が盛り込まれたかのような圧力が無理なく収まっている構成の妙は、ロバート・ゼメキス作品ならではと言った所か。細かい所では違和感無く世界へ引き込んでくれるハリウッド特殊効果の世界が存分に堪能出来る作品でもあり、正に職人技といった産物をお楽しみあれ。ちなみに原題は「彼女は死ぬのがお似合い」といった感じの意味合いでこれまた納得。
第4位.ロバート・ゼメキス「フライト」
ロバート・ゼメキス「フライト」がおすすめの理由
制御不能になった飛行機を不時着させ、犠牲を最小限に押さえた凄腕の旅客機パイロット。その手腕を支えていたのがアルコールと麻薬だったら…という命題に対し、人間性と法に基づく調査の両方から直面していくドラマ。現実問題として起こり得る要素をしっかりと組み立て、着々と物語が構築されていく展開は、事故調査というともすれば「後の祭り」となってしまう中で、無かったことにされてしまう一つの真実を拾い上げ、それが美しい一つの真実を壊してしまうとしても行うべきものであると取り決めた事を、ネジ一本破片一つまで拾い集めて追求するという米国運輸安全委員会(NTSB)の仕事ぶりを通じて突き詰めていく。このような物語にあってゼメキス監督一流と思わせるのが、事の善悪を煽り立てるのではなく、社会の熱狂とその中にある一人一人の苦悶、という余りに身近な人間性を緻密かつ丁寧に、しかし冷静に描ききるという描写力である。息苦しささえ感じる命題でありながら、最後まで見届けられる作品に仕上がっているのはゼメキス監督ならではだと断言したい。
第3位.ロバート・ゼメキス「ポーラー・エクスプレス」
ロバート・ゼメキス「ポーラー・エクスプレス」がおすすめの理由
トム・ハンクスが3Dモーションキャプチャでその演技力を遺憾なく発揮した事でも知られる作品。原作はアメリカでクリスマスシーズンのイベント列車によく用いられるとされ、クリスマスを彩る代名詞的作品と位置づけられている。そんな作品世界をロバート・ゼメキス監督一流のエンターテインメント性で描き出しているのがこの映画版である。クリスマスやサンタクロースを「大人の作り出した物語」として喜びを見失ってしまいそうな子供に対し、仕事する姿を見せる確固とした大人の姿を見せながらそこに喜びを忘れないでいるポーラー・エクスプレスの乗員達という対照的な人物が交流する姿を、単に子供向けの説教染みた話でない暖かさで丁寧に描ききった点が、大人も子供も関わりなく楽しめる本作の魅力である。クリスマスの雪景色を走り抜ける豪華な蒸気機関車を始めとした、物語を彩る絵的な美しさも相まって、クリスマスには見たくなる事請け合いの一本である。
第2位.ロバート・ゼメキス「バック・トゥ・ザ・フューチャー3部作」
ロバート・ゼメキス「バック・トゥ・ザ・フューチャー3部作」がおすすめの理由
最早語るまでもないとすら言える映画史に燦然と輝く金字塔の一つ。この映画はとにかく難解とされて敬遠されるか、曖昧で分かりにくいものとなってしまう時間旅行SFの最大懸案である「歴史が変わってしまう!」という部分をコミカルでドラマチックな物として見事に完成させた点が凄まじい。趣旨から少し外れて三部作まとめての評価としてしまったが、この映画に関してはシリーズ3部作を通じる事で完成と言えるのでどうしても3部作を切り離しておすすめする事が出来なかった。何故ならこのシリーズは時間旅行という難解な思考実験を結果的に3つのパッケージで分割しながら破綻無くまとめ上げる事に成功している為だ。ゼメキス監督を褒める言葉として何度も使わせて頂いている「構成力」が最大級に発揮されているのがこの三部作であるという事は間違い無く断言出来る。同時に、そんな難しい事を考えずに見ても全く問題が無いのもこの作品の良い所。それこそ時間旅行でやきもきするマーティ気分から、すごいぞ大発見だと大はしゃぎするドクの気分まで、見る人によってどんな切り口からも楽しめる正しく万人向けの作品である事が、この三部作最大の魅力である。パート1から是非とも順番に見て頂きたい。
第1位.ロバート・ゼメキス「コンタクト」
ロバート・ゼメキス「コンタクト」がおすすめの理由
極めてメッセージ性の強い、ともすればカルトチックな物語という意味ではおすすめし難い作品ではあるのだが、ロバート・ゼメキスという人物の根底にある宗教観のようなものが垣間見られる作品。個人的にロバート・ゼメキス監督作品の中で、広大な世界観を感じられる作品として是非一度見て欲しいと思う作品として第1位とした作品。宇宙のある方向から何らかの意思を持って発せられなければ有り得ない特異な信号のようなものを研究者達が受信した事で始まる一連の物語は、宇宙という余りにも広く、何処まで理解出来るかすら定かで無い世界を前にして、そこから断片的であっても人類以外の意思というものに相対したいという希望、いざそれを目の前にした時、人類が何か違うものへ変わってしまうのではないかとの恐れ、困惑の中で人類同士ですら理解しあえないという悲嘆への直面、そしてそのメッセージを送った者と対面した時に人は何を思うのかという幾重にも重ねられた強い思いが、一編の詩、或いは一枚の絵画のように描き上げられていく作品となっている。恐らくゼメキス監督でなければ作品として完成させる事すら困難だったのではないかと感じてしまう作品だが、例え面白く無いと言われてしまうとしても是非一度見て頂きたい。
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