エドワード・ヤン監督おすすめの映画ランキングTOP5

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エドワード・ヤン監督おすすめの映画ランキングTOP5

必要最低限の台詞と、研ぎ澄まされた映像で全てを伝えてくる監督だから。しみじみとする台詞もあれば、衝撃を受ける場面もあり、良い意味で感情がとても揺さぶられる。どの作品もとても洗練されている印象で、強く心に残る作品ばかり。

 

 

第5位.エドワード・ヤン「指望」

エドワード・ヤン「指望」

エドワード・ヤン「指望」がおすすめの理由

4人の新人監督によるオムニバス映画『光陰的故事』の第2話で、ノスタルジー溢れる作品。母・姉と暮らす少女の初恋が瑞々しくとても切ない。主人公は中学生で、少女から大人への過渡期が描かれているが、とても静かな描写で本作が映画監督デビュー作だが既にエドワード・ヤンらしさを感じる。そして何と言っても主人公の幼なじみの男の子が良い。自転車に乗れない、ちょっと冴えないその少年は明らかに主人公の女の子に好意を寄せているのだけれど、当の女の子には全くその気なし。淡い恋心の一方通行具合が可愛い。また、この少年がラストシーンにふと漏らす言葉がとても印象的。かつて自転車に乗れず一生懸命練習していた自分は、自転車に乗ってどこに行きたかったのだろう。どうして、ただひたむきに何かを思う気持ちは失われてしまうのだろう。と考えてしまう、深い余韻をもたらす言葉だ。希望や期待を胸に過ごす子ども時代にそっと戻り、当時感じたはずの不安やときめきが押し寄せ、胸を締め付けてくる一本。

 

 

第4位.エドワード・ヤン「カップルズ」

エドワード・ヤン「カップルズ」がおすすめの理由

美しいラブストーリー。内容は青春群像劇と言う方がふさわしいのかもしれないが、ラストシーンの美しさがラブストーリーだ、と私に言わせる。台北で悪事を働くチンピラグループのもとに、突然現れるフランス人の少女・マルトがとても可愛い。観ているこちらが大丈夫?騙されちゃうよ?と少し不安になるほど純粋なマルトが画面に登場した時から、映画が終わるまで、彼女の魅力にずっと引っ張られていく。強い繋がりを持っていたチンピラグループに生じる亀裂や、マルトと恋人との揺らぎなど、人間関係の脆さを浮き彫りにしながら、場面の繋がりなどはやはりエドワード・ヤンの手腕が光る作品。特にすきなのは、クライマックスで台北の街を駆けるシーン。気持ちで走っているのが伝わってくる。街は人で賑わい、どこかギラギラとしている。1つ違う通りでは、似たような誰かが悪さをしているかもしれない。孤独を持て余しているかもしれない。しかしそこで出会す二人を映す場面はどこまでも美しく、温度の高い爽やかさがある。このシーンのためにずっと映画を見つめてきたのだと思ってしまうほど、幸福感が溢れ出てくる。やはりこれはとてつもなく美しいラブストーリーだろう。

 

 

第3位.エドワード・ヤン「恐怖分子」

エドワード・ヤン「恐怖分子」がおすすめの理由

とても鋭利な作品。エドワード・ヤンの作品を観ていると、ホラー映画でもないのに「怖い」と感じる事が多々あり、本作は特に恐怖を感じた。それは飛び上がるような恐怖ではなく、どんなに逃げたくても足を掴んでくる、身動きの取れない静かな恐怖。都市に散らばっている何の繋がりもない人々がひょんなことから繋がり始め、そしてその繋がりが綻び始めると、もう後戻り出来ず、悲劇が待っている。私だって安易な行動から誰かを、何かを狂わせる“恐怖分子”になってしまうかもしれない。といった、知らぬうちに当事者となる怖さは今の社会にも通じるものがあるのではないだろうか。また、映像がとにかく格好いい。暗闇の中、人物を照らす明かりや、少女を写した写真が風ではためく様子など、観終わったあとに印象に残る場面がいくつもあり、そのどれもが他のどんな映画でも観たことがないものばかりである。個人的に1枚1枚写真をめくっていったら、とてつもない結末に辿り着いた、という印象だったので、写真好きのひとにもおすすめかもしれない。都市を舞台にしたエドワード・ヤン作品の中でも特に傑作と言える。

 

 

第2位.エドワード・ヤン「牯嶺街少年殺人事件」

エドワード・ヤン「牯嶺街少年殺人事件」がおすすめの理由

最初から最後まで張りつめた糸を辿るような緊張感と、青春のきらめきに溢れた傑作。随所にエドワード・ヤン節が炸裂していて、約4時間の上映時間もあっという間に過ぎていく。主演である若き日のチャン・チェンが眩しく、ヒロインの小明役を演じたリサ・ヤンの独特な眼差しなど、キャストの魅力も存分に味わえる作品。不安を打ち消すかのように徒党を組み衝突しあう若者たちを見つめていると、人々が心の何処かに抱えている行き場のない哀しみ、虚しさが、そのまま当時の台湾を表しているように思えてくる。そして本作で印象的だったのは、光と闇の描写だ。暗闇の中から突然弾んで飛んでくるボールや、消えては火を灯す蝋燭、奇襲を仕掛けるシーンでの、懐中電灯の蠢き。それらのシーンは、主人公が落ち込むヒロインに「ずっと友達だよ」と励ます場面の眩しさを際立たせる。響き渡る楽器の音色の中で発するその言葉は輝いていて、これから起こる悲劇を知る由もない。あんなに眩しかった日が、確かにあったのに。そう思いながら切なさが心に横たわり、いつまでもこびりついて離れない。

 

 

第1位.エドワード・ヤン「ヤンヤン 夏の想い出」

エドワード・ヤン「ヤンヤン 夏の想い出」がおすすめの理由

人生に疲れた時、ふと観たくなる珠玉の一本。とある一家の、家族ひとりひとりに焦点を当てた物語で、ヤンヤンは小学生の男の子。色々なことに興味や疑問を持つヤンヤンが、周りの大人たちの遣る瀬なさを少し和らげてくれる。おすすめはしきれない程沢山あるけれど、子どもだからこそのヤンヤンの哲学が愛らしい。誰かの後ろ姿ばかり写真に撮るヤンヤンに、大人が何故後ろ姿ばかり撮るのか、と尋ねると「自分じゃ見えないでしょ」という答え。思わずそうだよね、と頷いてしまう。可愛らしく自分の毎日を存分に過ごすヤンヤン、倒れてしまった祖母、初恋を経験するヤンヤンの姉、恋をやり直そうとする父、人生をやり直そうとする母。時には残酷な運命が待ち、人生とはただ綺麗なだけではないと感じる。でも、人生にやり直しはきかない。一度しかない。生きていく上でのどうしようもない哀しみや切なさを携えながら、それでも素晴らしい瞬間に出会う日がくる。クライマックスでヤンヤンが読み上げる手紙には、涙を止めることが出来ない。絶望と輝きが同居する人生を見つめた、心に残る感動作。

 

 

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