市川準監督おすすめの映画ランキングTOP5

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市川準監督おすすめの映画ランキングTOP5

日常の風景を淡々と切りとりつつ、その中にある人々の感情を温かく切なく滲ませて見せてくれる監督です。この監督の映画をみて、日常生活の中にもいろいろな心の機微が動いているのだと気づきました。監督としてこれからという年齢で亡くなったのが本当に残念ですが、大好きな作品をたくさん残してくれました。

 

 

第5位.市川準「たどんとちくわ」

市川準「たどんとちくわ」がおすすめの理由

乗客のぶっきらぼうな態度にストレスを募らせるタクシー運転手と、行き付けの料理屋の居心地の悪さに悪酔いしていく小説家の、異常な爆発を描いたオムニバス2篇からなるバイオレンスアクション(?)。ごく普通の日常が微妙にねじまがっていくような、椎名誠のシュール短編小説が原作で、市川監督の中でも屈指の異色作です。役所広司、真田広之という2大スター主演で、静謐な作風ですでに世界的な評価を得ていた市川監督がとる映画がこれかー!!とビックリしました。タクシー運転手の物語「たどん」では、車窓の中に閉じ込められたような変わりばえのしない日常の中で積もっていくフラストレーションがりあるに感じられ、コミュニケーションをないがしろにされたちょっとした苛立ちが発火点になって爆発する狂気を、役所広司が鬼気迫るテンションで見せてくれます。一方「ちくわ」では、妙に明るい料理屋の居心地の悪さが絶妙で、売れっ子作家ぶってる自分の虚勢にも悪酔いしているような小説家の混乱ぶりが最高に面白い。極彩色の血飛沫が飛びまくる中での、やたら流麗な真田広之のアクションが絶品です。ついに二人の主人公が出会うラストの、血まみれなのに不思議な爽快さといい、シュールさが魅力の怪作でした。

 

 

第4位.市川準「大阪物語」

市川準「大阪物語」がおすすめの理由

大阪の下町で、夫婦漫才をしている両親の離婚話に揺れ動く少女のひと夏の物語。ずっと東京を舞台にしてきた市川監督が、初めて大阪を描いた作品です。ド大阪と言ってもいいような、下町コテコテの大阪を舞台にしているのですが、それでも阪本順治監督のようなエネルギッシュな大阪でなく、どこか客観的に見守っているような静かな温かみを感じるのは、やっぱり市川監督の味だなあと思いました。この映画はなんと言っても、ヒロイン池脇千鶴と、両親の夫婦漫才師を演じる沢田研二・田中裕子夫妻の魅力に尽きます。まったくの新人だった池脇千鶴は、愛嬌のある表情とホンワカした大阪弁で、じゃりんこチエのような愛すべき大阪の女の子そのもの。彼女が、笑って受け止めることのできない両親の離婚という事態に直面し、自分なりに必死に行動を起こしていくひたむきさにとても惹き付けられました。ダメ親父を演じる沢田研二の枯れた色気も絶品で、こんなに味のある俳優さんだったとは驚きです。田中裕子の厳しいこと言いながら根本的なところでユーモアを忘れない優しい感じもとても良かったです。真心ブラザーズや尾崎豊の音楽も、爽快さと刹那的な輝きがあって、ほかの市川作品とは一味違う青春映画になりました。

 

 

第3位.市川準「ざわざわ下北沢」

市川準「ざわざわ下北沢」がおすすめの理由

下北沢の街で暮らす人々の哀歓を、カフェで働く若い女性の目線から描いた小品。下北沢の街に何の興味も思い入れもなく、お洒落な雰囲気に馴染めないんじゃないかと気後れしつつ見始めたのですが、何でもない日常の中にじわりと温かみと切なさが滲む、市川監督の真骨頂と言えるような空気感で、大好きな映画になりました。「ざわざわ」というだけあって、いろいろな人たちが少しずつ登場する素描のような場面が積み重なり、古いものと新しいものが入り交じっているようなこの街に静かに息づく不思議な熱気が伝わってきます。その中で印象に残るのが、イングリッド・フジ子・ヘミングや原田芳雄といった年長者の話をヒロインが聞く場面。彼らが醸し出す慈味あふれる雰囲気、地の言葉なんじゃないかと思われる訥々とした言葉は、若者を見守る温かい視線に満ちていて、とても心に残りました。それをまっすぐに受け止める、まっさらな若者を体現するヒロインもとてもいい。彼女が、この街の温かみを一種のぬるま湯と捉えて出ていく決意をするラストは切なくもあるのだけど、これから人生を歩み始めるスタートの潔さが心地よく、応援したくなりました。淡々とした物語の中で、突然温泉が吹き出すビックリのクライマックスも好きです。

 

 

第2位.市川準「BU・SU」

市川準「BU・SU」がおすすめの理由

複雑な家庭に育ち、東京の親戚に預けられた高校生の少女が、周囲の人たちと関わりながら成長していく物語。レンタルビデオのパッケージに書かれていた「青春映画、作りました」というストレートなキャッチコピーが鮮烈に印象に残る、私の中での青春映画の金字塔です。作品解説などを読むと、ヒロインの少女は「心がブスな女の子」と、作品タイトルに絡めてかなりあんまりな説明がされているのですが、そういう印象は持ちませんでした。自分の家庭を周囲と比べて思い悩み、自意識にとらわれて周りに馴染めない彼女の頑なさは、普遍的な思春期そのもので、とても共感できるものだと思います。そんな彼女が、わずかな理解者に支えられて、ささやかだけれど地に足のついた一歩を踏み出していくのがとても感動的です。彼女のまわりに理想的な大人などいなくて、みんな不器用に彼女を見守っている感じも温かい。彼女の文化祭での挑戦は結局失敗に終わりますが、そのほろ苦さを受け止めて初めて笑顔を見せる彼女に、とてもリアルな青春を感じました。ヒロインの富田靖子が体現する思春期の不機嫌さが絶妙で、多くの若手女優を輝かせてきた市川監督の最初の一歩がこの作品だったというのはとても納得です。

 

 

第1位.市川準「トキワ荘の青春」

市川準「トキワ荘の青春」がおすすめの理由

昭和30年代、若い漫画家たちが一緒に暮らしていたアパート「トキワ荘」での青春の日常を描いた作品。年長者の寺田ヒロオを主人公に、売れて第一線で活躍する者、なかなか芽が出ずに苦しむ者、諦めて去っていく者、それぞれの日々が淡々と描かれます。まるで時間が止まっているようにノスタルジックで、しかし時代の流れの中で確かに葛藤し変化していく若者の刹那が切り取られていて、とても心揺さぶられる青春映画でした。寺田ヒロオに扮する本木雅弘の端正な佇まい、静謐な立ち居振舞いが素晴らしく、若者たちを俯瞰して思いやりつつ自身も思い悩んでいるという立ち位置で、とても共感させられました。彼が気にかける若者の一人が大森嘉之演じる赤塚不二夫で、彼が長く寺田ヒロオと話し込み、励まされて涙を流す場面は忘れられません。けれど、その赤塚不二夫がやがて売れっ子として漫画家道に邁進し、寺田ヒロオは悩んだ末にアパートを去っていくラストがやはり淡々と描かれ、時間というものの厳しさも感じさせます。大丈夫、まだやれるよ、お前はまだやれる、という友人の言葉が心に沁みました。

 

 

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